老後に不安がある方へ

 『老後』というテーマは、すべての方々にとって見過ごすことのできない、ある大きな問題を抱えております。それは、ズバリ『お金』の問題です。もし、今何も手を打たずに年齢を重ねていくとどうなるでしょうか。生きることすらままならない状況が大きく口を開けて待っているのです。ここでは、生きることすらままならない状況(老後破綻)にならないようにするためにできる対策をご説明したいと思います。

小規模企業共済

 この制度は、主に個人事業主と会社役員の方に向けたものです。これらの方々は老後の支えとなる退職金を自分で用意しなくてはなりません。毎月1,000円から70,000円の範囲で500円単位で金額の設定ができます。銀行にある定期積金のイメージでいいと思います。

 では、定期積金と小規模企業共済の違いは何でしょうか。まず、第一に掛け金の全額が計算上の儲けである所得から差引くことができること(所得控除)が挙げられます。

 これは、節税という観点からも非常に有効な方法です。所得税は所得に応じて5%から45%に区分されており、所得がそれぞれの税率区分を上回ってしまうと税率がアップしてしまうという、恐ろしい仕組みとなっております。

 それを防止するためにこの制度を利用するのです。所得税を納める方であれば最低でも5%はかかり、併せて住民税も10%かかるので、合計15%分の節税が可能となります。

 この制度を長期に渡り利用することで、解約するまでは毎年節税を堪能し、解約する際にはまとまった資金を手にできる。

 こんな天国みたいな制度ですが、扱いを誤ると思わぬしっぺ返しをくらうことになります。最悪の場合、元本割れしてしまうこともあります。安易な解約は慎むべきでしょう。


積立NISA

 この制度は、2018年1月より導入されたもので、小規模企業共済と違い、20歳以上であればどなたでも加入できます。内容としましては、最大20年間続けることができ、800万円までの掛け金に対して得られた運用益は非課税になるといったものです。

 年間でいうと40万円まで掛けることができます。一般の投資では、利益に対して20.315%の税金がかかるため、かなりお得な制度と言えます。よって、その分が節税につながるのです。

 ここで突然ですが、今の普通預金の金利をご存じでしょうか?なんと年0.001%です。100万円預け入れても1年間で10円しか利息が付かない計算になります。これで老後の備えとなるのでしょうか?

 積立NISAは金融庁が認可した商品しか取り扱えないというルールがあり、皆さまがイメージされている株式やFX、仮想通貨のように値動きが乱高下するものではありません。積立NISAが扱う商品は投資信託という金融商品です。日々の値動きはファンドマネージャーと言われる投資のプロに任せる形となります。

 また、この商品のコンセプトが、『長期・積立・分散投資』であることから、長く保有していれば複利効果によりその分資産が増えるため、老後の資産形成にも向いていると言えます。

 


個人型確定拠出年金(イデコ)

 この制度は、先に挙げた2つの制度に比べて老後の資産形成には最も向いていると言えます。なぜなら、良くも悪くも掛け金の積立てが強制されるからです。

 毎月5,000円から1,000円単位で金額の設定ができます。掛け金の上限額については、国民年金の被保険者区分によって異なります。

 例えば、自営業の方であれば、月68,000円まで掛けることができます。国民年金基金との併用も可能で、その場合は2つの掛け金を合わせて月68,000円となります。

 加入対象者は、60歳以上の方、海外に住んでいる方、国民年金未納者以外であれば全員といっていいでしょう。

 この制度の特徴としては、小規模企業共済と同じく掛け金の全額を所得から差引くことができることです。また、積立NISAと同じく投資により資産を運用していきます。よって、元本割れのリスクが生じます。ただ、定期預金のように元本割れのリスクがない商品もあるため、積立NISAより商品の幅が広いと言えます。

 その一方で、デメリットもあります。それは、一度契約してしまうと、どんなに早くても60歳までは解約ができないことです。掛け金の払い込みを止めることはできますが、毎月の掛け金を払う際に一定の手数料を差し引いて運用するため、その掛け金がないと手数料だけが生じてしまい資産運用に支障をきたしてしまいます。

 こちらについては、他の2つの制度に比べて融通が利かないため、加入には慎重な判断が必要でしょう。